古紙からトイレットペーパーができるまで
JMC定時総会のイベントで、古紙の再生工場を見学する機会がありました。
兵庫県たつの市にある「西日本衛材株式会社」という企業です。機械設計に
直接結びつく訳ではありませんがごく身近な日用品のトイレットペーパーの
製造と云う処に大いに興味が湧きました。工場は昭和30年代後期の建設で、
ガイド担当の方の忌憚なき説明にもありましたが、相当に年季を経た施設で
はありました。工場の稼働は先ず古紙の搬入から始まります。毎日10ton
トラック13台分、即ち130tonの古紙が運び込まれます。これらは大阪方面
の古紙問屋、大手企業、官公庁などから直接、間接に持ち込まれます。
同社の製造工程では2交替、3交替の現場もあり、フル稼働の状況ですが、
古紙(原料)の在庫は持たないシステムで、毎日の原料搬入を原則として
います。
搬入された原料は「水と苛性ソーダ」で溶解します。ドロドロになった原料は
'パルパー'と呼ばれますが、古紙回収の際に段ボール箱などに詰められた
機密書類等は厳重に封をされ、そのまま溶解タンクに投入されます。
これを「無開封」とか「未開封」と呼び、通常廃棄と区別し、公共機関や役所
など機密書類搬出元は確かに未開封のまま溶解されるのか、投入時に係
員が立会い確認することになっています。そんな訳で紙の他に何が混在し
ているのか分かりません。次にこのドロドロになった原料を「熟成タワー」と
呼ぶサイロのような大きく高いタンクに入れて2日間寝かせてインクなどの
不純物を取り除き易くします。そしてこれを「高濃度クリーナー」にかけて
水洗いしながら機密書類についているクリップやホッチキスの針などの金
属類を取り除きます。このとき大量の水を使用しますが、近隣の農家との
兼ね合いもあって、汲み上げた地下水は循環させて再利用しています。
次にSSセパレーターにかけ、紙パックなどの両面にコーティングされてあ
るポリエチレンフィルムなどを取り除きます。取り除かれたプラスティック類
は燃料として別途再利用されます。原料は更に水洗いを重ねて凝集沈殿
槽にかけ、インクや泥を沈殿させ、スラッジとして排出します。このスラッジ
はセメント会社に提供され、強固材などに再利用されています。
金属類、プラスティック類、泥、インクなどが取り除かれてきれいに洗浄さ
れて紙の繊維だけになった原料を金網に吹き付けて紙をすきます。
これを抄紙機という巻取り機械にかけ、直径1.8m、重さ約1tonのジャンボ
ロールを造ります。これは一般的なトイレットペーパーのロール"7,500個分
に相当します。これをリワインダーにかけ、通常のロール直径になるように
巻き替えます。"
これをログカッターで規定の幅にカットし、ポリ袋に包装して製品となります。
トイレットペーパーは純白が基準で、新聞紙や普通の段ボールは原料には
不向きで使用しません。最近はピンクやグリーンのカラフルな花模様などの
トイレットペーパーがありますが、これはカラー印刷されたペーパーと純白の
ペーパーを張り合わせることにより鮮やかにカラーの模様が映えるため、
白の色具合が灰色系や茶系など少しでも色がついているとカラーが全く別
の色具合になってしまい、商品価値が落ちることになります。同社では古
紙からの再生とは別にパルプからの生産も併せて行っており、古紙のよう
な溶解から始まる工程は省略できますが、原材料が高価なため、製品コ
ストも割高になってしまいます。これらはトイレットペーパー以外のタオル
ペーパー、ティッシュ、などの製品に回ります。このほか、ミシン目入れ、
香り付けなどの工程もあって、1日平均70万ロール、7200ケースを製造し
ており、全国のスーパー、コンビニ、ネット通販などに出荷されます。
家庭から分別された紙パック類やオフイスの廃棄書類を再利用すること
で紙ゴミ削減に貢献し、出来上がったトイレットペーパーを地域に還元す
ることで「循環型社会」への推進に取り組んでいる会社があることを知り、
身近な紙のリサイクルシステムを改めて実感した次第ですが、我々の社
会では如何に大量の紙を使用しているか、このようにリサイクルされるの
は一部で、多くはゴミとして廃棄、または焼却されていると聞きました。
お土産にトイレットペーパーを1個頂きましたが、使ってみたら心なしか・・・
やわらかい感じがしました。