<OJTの難しさ>
近鉄エンジニアリング株式会社
下山智之
今の会社、機械設計業界に入ってから、今年4月で12年目になりました。
部下も数名でき日々の業務をこなしております。ある程度の経験年数が
経つと、部下の指導に無神経になっている事に気が付きます。例えば
「自分が新人の頃に分からなかった事を忘れている」といった事や、つい
つい部下に「なぜ言った事が出来ていないのか」と叱ってしまう事などです。
業務で例えると、経験年数の少ない部下と打合せをするときに「この装置
の調整機構は、調整しにくいから変更しといて」と言ったとしましょう。ベテ
ランの設計者なら この打合せ内容と参考図面があれば依頼したアウトプ
ットが出てくるでしょう。
しかし、部下からすると何の目的の調整機構で、何で調整しにくいのかが
分からず結局、何を改善すればいいのか理解できず、依頼したアウトプット
が出てくるはずが ありません。自分が常識として分かっていること(経験や
技術等)を打合せで伝えなかった事が問題であり、相手の経験に合わし補
足することが大事だと考えます。もう一つの要因は、人の記憶です。[網様
体賦活系](もうようたいふかつけい)という言葉をご存知でしょうか。簡単に
説明しますと、脳は自分の中にある記憶や自分が興味のある事しか反応し
ないという事です。脳は自分が聞きたい事以外はほとんどスルーしている
そうです。興味がないセミナーなどで眠くなることは仕方のない事なのです。
打合せに於いても部下が興味を持つ話し方が出来るかが大事だとえます。
しかし、せっかく脳に入れた情報も、その時点から記憶は失われていきます。
心理学者のヘルマン・エビングハウスによって導かれた、人間の脳の「忘れ
るしくみ」を曲線で表してある忘却曲線があります。これによると、記憶は20
分後には42%を忘却し、58%を保持。 1時間後には56%を忘却し、44%
を保持。このように、記憶は時間の経過と共に少しづつ忘却していくそうです。
これが本当ならば、長時間の打合せだと最初の記憶は忘却してしまうことに
・・・
経験年数による互いの知識や技術力のギャップ。言葉だけを連ねたような
打合せ。興味を持てず記憶に定着しにくい打合せ。これらを改善するには、
ビジュアルに訴えるとこが重要だと以前セミナーで聞きました。絵は言葉より
もメージで記憶残りやすく、関連記憶を呼び起こさせる効果があるそうです。
打合せのときには、1枚の図面の中に、検討箇所や注意するポイント、ポン
チ絵術計算、スペック等 そのユニットに関する必要事項を書き込むことが
重要です。また、色を使い分けることで、より印象に残りやすくなります。
部下の前で指示をだしながら図面に書き込んで行くことで、設計の進め方
や技術を伝えることが出来るのではないでしょうか。時には、理解出来ている
かを確かめる為ポンチ絵を書かせたりもしています。今後も部下の指導に
力を注ぎ、社会に貢献来る技術者を育成できるよう努力して行きたいと思
います。