<おもちゃ修理から見た設計>
梶川義宏
退職し会社に行かなくなって長い。家で何もやらないのでは身の置き場が無い。
月一回の子供のおもちゃ修理ボランティアに参加して4年経った。 (いわゆる
「おもちゃ病院」と言われ各地に有ると思う。子供に物の大切さ、もったいない精神
を植え付け、興味をお持たせる。我々は、出来る限り子供の目の前で修理する)
今まで130点ほど色々なおもちゃを修理させてもらったが、7~8割は直ったかな。
最近のおもちゃの特徴は、電子化されて音の出る物が多い。 「Made in China」
が8割以上。日本製はほとんど見たことが無い。
「電動スロープ」(自動車をベルトで坂道を持ち上げる)の修理依頼が来た。様子を
見るとモーターの回る音はするが、ベルトが回らない。この故障が多い。モーターに
ついているギヤーが割れて空回りしていると思われる。裏蓋をはずし、モーターユニ
ットを開けてギヤーを見る。やはり樹脂製のギヤーのウェルドライン(*)から割れてい
た。手持ちの同じギヤを打ち込み取り付けて完了である。簡単に直った。このギヤー
も同じ製法のギヤーだから、何年持つか?
良く使われる樹脂の歯車は、モジュール=0.5 歯数=10枚。内径=2mm 歯元
円と内径の最小板厚は0.9mm弱。これでは持たないよ。せめて歯数12枚にする
と少しだが板厚アップ出来る。動きは見た目で変わらない。次に来たら、歯数を12
枚に変えるかギヤーをモーター軸に接着固定しかないな。センターずれが0.5mm
出るが何とか使えると思われる。
*ウェルドライン:射出成型において樹脂が金型の中で出会うところ。流れの先端の
冷えた樹脂が合わさるので、樹脂本来の強度は無いと言われている。
「犬のぬいぐるみ」の修理依頼が来た。脚が折れて前に進まない。(ぬいぐるみの
故障の多くがこれである。)縫い目を解いて中の機構を見る。やはり樹脂部の折れだ。
樹脂を使いこんな肉厚では割れるのが目に見えている。真倫版で添え木を造り、
スクリューで締めてなおす。何とか動き始める。再度同じような強度の無い部分が
折れる可能性がある。樹脂を使うことによる強度不足の同じような不具合がなんと
多いことか。設計するときは、
・類似した不具合情報を確認して織り込んでいるのか。
・形状、数値、材質等々を決める時は使用状況をどこまで考えているか。
・DR、解析手法等を使用し、設計上の問題点をどこまでつぶしているか。
設計者は、子供がどのように使うのか考えているのかな?子供は、取り合いし
強引に引っ張ったり、上から押さえ込むこともある。想定しているのか?
『設計者も現場へ出て積極的に物の不具合情報を得なければ駄目だ』と言う
事を再認識した次第である。
どのように修理するか、担当者に任されているのでそれを考えるのも老化防止
と思う活動である、それにしても、おもちゃの種類のなんと多いことか。
来月はどんなおもちゃが来るかな。直ったときの子供の笑顔がなんとも言えず、
こちらも笑顔をもらい楽しみな活動である。